色にはパワーがある

エッセイ

色にはパワーがあるから、カラフルな色を着たい、とほほ笑むご婦人の、
白地に濃い緑の葉柄が際立つワンピースが目に焼き付いた。

決して暗く地味な色が印象を悪くするわけではないけれど、
その日の気分で”目に痛くない色”というものがあったりするものだ。

今日は朝から緑をテーマにコーディネートしようと心に決めていた。
エメラルドグリーンのシャツが目に入った瞬間に、これを主役にしようと私の直観が働いたのだ。
直観というほど強力な力があるわけではないのだけれど、なるべく瞬間的に感じたことは大切にしようと思っている。


緑のシャツに、下は白地にカーキでイタリアの町並みが描かれているキュロットスカート。
ゴム製で通気性の良いところもお気に入りだ。

若干の肌寒さも残る時期なので、その上から薄い抹茶色のジャケットを羽織り、
緑のワンポイントが光るNike製のベージュのスニーカーを合わせた。
鞄は木色のショルダーバック。とてもコンパクトだけれど、必要最低限の厳選された荷物を持ち歩くには良い鞄だ。

スニーカーという属性と、ジャケットが上手く機能したようで、
上品さは残しつつもカジュアルな雰囲気に仕上がった。

上品な雰囲気はどこに残るのか。それは紛れもなくエメラルドグリーンのシャツがもたらす功績だろう。
白地にカーキでイタリアの町並みが描かれているキュロットスカートも綺麗めな印象を残すアイテムではあるが、単体で眺めてみると、不思議なことに綺麗ともラフなアイテムとも言い難い。

一方で、エメラルドグリーンのシャツはその鮮やかな色が目に焼き付き、
瞬間的に上品な大人のアイテムという判断を脳が下してしまうのだ。

形だけ見れば決して上品ではない。
例えばこの形、この素材で白いシャツであれば途端にその上品な印象は失われることが容易に想像できる。

脳の判断には、これまでの人生で蓄積された様々な情報が根拠となる。
それはつまり、色に対する情報と評価もそこに多大な影響を与えるわけで、
なんなら洋服の素材や形に対する評価よりも、色がもたらす情報は古くそして普遍的なのではないか。

無意識ほど強いパワーはなかなか無い。
色が持つパワーの源が、私達の無意識に眠る情報であり、概念と結びついて蓄積されているのであれば、その力はあまりにも深く、強烈であることに納得してしまう。





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