以前から気になっていた映画「オッペンハイマー」を見てきました!
世界初の原爆を開発し、「原爆の父」と呼ばれた物理学者 ロバート・オッペンハイマーの生涯を綴った物語。
クリストファー・ノーラン監督の映画とのことで、ダークナイト等の作品を手掛けた方なんですね!
それでこの時代にこのテーマですから、それは当然注目度も高いわけです。納得。
頻繁に映画を観ることがない私、恥ずかしながらこの映画の存在も知らなければ、アカデミー賞受賞作作ということも知らず…当然ながら監督のことも、豪華俳優陣のことも全く把握しておりませんでした。(トホホ)
母から「原爆を作った人をモデルにした映画」という噂を聞き、その作品のテーマ性に惹かれて見てみることに。完全に素人の好奇心で手を出しました。
感想は…
率直に、見終わった後スッキリしません!!(※褒め言葉)
映画のメインは、オッペンハイマーの生涯と、原爆を開発するに至る過程から苦悩、葛藤、それを取り巻く人間模様。なはず。
上映時間は3時間。大好きな”ハリー・ポッター”シリーズでもだいたい2時間半ですから、重いテーマとはいえそんなに長い…!?とビビりながら席に着きましたが、終わってみるとあっと言う間でした。
テーマが重厚であることはもちろんですが、政治模様やら人間模様、時代の流れが複雑すぎてよくわからない(;’∀’)!!
字幕で話している内容を考えるてるうちに次ぎの場面へ移ってしまう。正確に時代背景と重ねて作品を観るのであれば、事前に下調べをしてから見た方が面白かっただろうな、と反省しました。
(悔しかったので、ここは改めて時代を調べたいと思っています)
ただ、考えながら見る必要がある分、見応えはあるし飽きは一切ありません。
映像や音楽の使い方、何より俳優さんの演技が素晴らしいので、オッペンハイマーの心の動き、葛藤や苦悩といった人間ドラマは見て取れます。
オッペンハイマーは戦争に翻弄された被害者の一人であると感じますが、当然ながら彼に同情することは難しい…
会議で、主要人達が原爆投下の話しをジョークを交えながら話す様子は、米国式の会話と理解していても気分が悪かったですね。
日本人が観て不快であるということは、それだけ映画に没入できているということですし、米国の様子をリアルに描いてくれているということでもあると思うので、作品の質の高さを感じます。
広島、長崎に原爆が落とされた際の様子が映されなかったのは、この映画が主張するものではないことを明確にするためかと思っています。あとは両国への配慮もあったのかな。
個人的な意見としては、やはり映し出すことでリアルを追求してほしかった気持ちもありますが、それを映すことは、オッペンハイマーの映画ではなくなってしまうことも理解できます。
オッペンハイマーという人物について
今回の主役であるオッペンハイマーは、見る側としても辛い立場の人間ですね。
物語として見るには感情移入できないし、伝記であると割り切って、第三者として彼を見ようとするにも彼の存在が遠すぎるんです。
作中でも、貴方がわからない、と責められていましたが、映画を通して事件の全体像をあらかた把握しているはずの自分でも全くわからん…。
原爆を開発した張本人が、水爆の開発は反対する。言動に相違があるのは、彼が実際に使われた原爆を前に考えが変わったということで、その葛藤と苦悩は見て取れるのですが、果たして彼の真意はどこにあったのか?
罪の意識から反対したのか、科学者としての信念があったのか。
信念を持って取り組んできた仕事で人を殺した、国の方針を変えてどうにか自身の科学を立て直そうとしたところで、過去の実績を真正面から受け止めることは到底耐えられるものではないと思いますし、自分の主張を持つこと自体憚られるのかもしれません。
この映画では、原爆に対する彼の信念、考えみたいなものを極力創作しないようにしていると感じました。
実際オッペンハイマーの心は揺れていて、その様を表現したかったのでしょうし、制作者としてもオッペンハイマーの真意を測りかねているのではないかな。
原爆を生み出した天才の苦悩を理解して表現するなんて難しいことだと思いますし、作品とはいえ憶測で形にすることは、実在した人物を描くうえでは意図に反すると思うで。
ただ、彼の真意がわからない以上、当然共感もできないし、同情するにも、日本人として生まれ育った私に寄り添うことは難しくて複雑でした(泣)
その頭脳を駆使して未来永劫賞賛されるような、人間として真っ当な開発をしたいと願うのは、学問を究める人間にとって共通の願いであるはず。
オッペンハイマーにもその権利はあるはずなのです。
目の敵にしていたナチスと、結果的に似たような存在にされてしまうなんてあまりにも皮肉すぎる。
彼は「戦争」によって明晰な頭脳とリーダーとしての才能を軍事利用された挙句、加害者として祀り上げられた、一人の戦争の被害者なのだということを痛切に感じました。
まとめ
日本人として、原爆を開発した張本人を知ることができたこと。
また、映画を通して米国の価値観や事情を知ることができて、見てよかったと感じています。
調べたところ、日本での上映は米国での上映からだいぶ遅れたみたいですね。
被害国ですから諸々の協議や懸念もあったのでしょうが、むしろ私達が観るべき映画なのではないかと!
こういった映画が日本で上映されたというのは、なんだか世界の変わり目のような気がしています。
憎むべきは「戦争」。戦争は人殺しを正当化し、一部の人間たちが欲のために誤った思想を生み続け、不幸の連鎖を招くもの。
高校時代、平和学習で聞かせていただいた戦争の生存者の方のお話しを思い出して、たまらず涙が溢れました。
あの時の話しに登場した方々が、安心して笑ってくれるような世界になってくれることを祈るばかりです。
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