ダブルのアイスはやがてひとつになる

エッセイ

5月9日は「アイスの日」らしい。

アイスを食べるなら、私はダブルサイズを選びたい。
トリプルだと溶ける前に食べきることが難しく、シングルだと物足りない。
ダブルはその中間とあって、味の種類も楽しめるし溶けるまでの時間配分も無理がなくちょうど良いのだ。

味を選ぶときは大抵選ぶものが決まっているのだけれど、変わり種がある時はそちらもダブルのひとつに取り入れる。
何を選ぶのか、何故それを選ぶのかは、自分と一部の人にだけ共有することができる秘密だ。

最近、持論を語ることに抵抗を感じる瞬間が増えたように思う。
持論とは自分の経験則や過去の出来事から感じ取った、自分の味のようなものなのだけれど
今を取り巻く世界には、うっすらとした正論の膜が張り巡らされていて、珍味を取り入れることはあまりしない。

コーンかカップの二大巨頭が”倫理観”という枠だとしたら、
その上に乗せるアイスクリームはバニラでも抹茶でも、グレープでも岩塩味でも、ラベンダー味でも美味しく食べられると思うのだけれど。

今、ダブルのアイスクリームを食べようとすれば、その味はバニラかチョコレート。
チョコレートはバニラをコーティングしたもので、溶けてゆけばやがてひとつになり、口の中にはバニラの味しかしなくなる。

そんな食べつくした味なんてつまらない。なんて味気ない、つまらない世界。

私はまだ見ぬ味のアイスクリームを所望する。
見たことも聞いたこともない、だけど食べたら案外美味しいかもしれない。
不味くたって、それも笑い話にできればおいしいつまみになるもんだ。



ところで、各企業がアイスの日にちなんだ新商品を発売するらしい。
サーティワンは「よくばりフェス」を開催するらしく、期間限定新フレーバーも登場する模様。
これは気になる。
まだ見ぬ新しい味、感動の世界を求めて、さっそく食べに行ってみよう。


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