ポジティブファンデーションに飽きてきた

エッセイ

ネガティブな思考を続けていると現実との摩擦に自分が追い付かなくなってしまう。

世間という大海を泳ぐために、自ずとポジティブ変換を覚える人間の姿は、
まさに生きるために姿形を変えたり、特殊能力を身に着ける生命の神秘のようにも見えるし
たくましく世の中を生き抜く生命力の象徴にも思える。

ポジティブ思考という能力が、生きるうえで役立つことは重々承知しているし、
ネガティブだと人間関係にも支障をきたすのだから、もはや選択肢など存在しない。

厚化粧のうえにポジティブ風味のパウダーを振りかけて、ぎりぎりでもヒト科であることを保つための表情をぶら下げて、重いドアを開けるしかないではないか。

そこにはオーガニックな原料なんてほぼ含まれていないってのに。
食事でさえ天然素材にこだわるこのご時世に、個性だけはモデルルームのように整った形で量産される。
飲み込んだのは個性か、主張か。はたまた幾千もの”好き”のカケラなのか。


化粧をしたまま寝てしまうとシミやそばかす等、肌トラブルを引き起こす原因になるらしい。

ポジティブファンデーションを纏い続ける代償とは?
息切れ、動機、意欲の低下、人生への悲壮感、以下略。


すっぴんで表参道を歩きたいとは思わないけれど、
田舎のたんぼ道くらいなら、すっぴんにTシャツジャージにスウェットで歩いてみたい。

自然が運んできた美味しい空気を、身体全体で吸い込んで、思いっきり太陽を浴びなければ、私達はヒトの形を保てない。

ファンデーションにまみれた獣が生まれる前に、素肌を潤す世界になればいいのに。














コメント

タイトルとURLをコピーしました